どうして、そんな表情になっているのかしら?
きょとんとしていると台ふきを持ってきたルイは、クスクスと笑っていた。
「どうやら、自分がやらなくて良かったと思っているみたいですよ?
“ダサい”と言っています」
「えーダサくないよ!」
カッコいいと思うんだけどな?
しかし……そうか。もしキラ君が転生せずに一緒に過ごしていたら。
彼もダンスをやっていたのか。
50メートル走は、獣族だから運動神経が抜群だっただろう。
ならダンスは、どうだろうか?
うーん、確かに嫌がりそうね。恥ずかしがって
踊っているところを見てみたいがキラ君は、そういうのを嫌がりそうだもんね。
「いや、結構ダサいぞ。それ……ボンボンだし。
元の歌の振り付けは、カッコいいのにな?」
もう……シンったら一言多い。
笑いながら失礼なことを言うシンに対してムッと頬を膨らませた。
すると……その時だった。
「おやおや。音楽が聴こえたから覗きに来てみれば、
随分と可愛らしいことをやっているね?」
そう言いながら顔を出したのは、リズだった。
あ、いや……リゼルさんか。
獣族の皇族の側近で、キラ君の護衛役だった人。
しかしそれは、まったくのデタラメだった。
潜入調査で獣族に潜り込んでいただけで本当は、
精霊四大臣の正妖精・リゼルだった。
精霊四大臣は、キョウ様の次に長生きをしていて身分の高い方々だ。
それに能力も2つ持っているらしい。
彼は、どんな種族にも姿を変えられる“変化”と
どんな場所でも速く走れる“瞬足”の2つを持っていた。
凄い方なのだが、前のことがあり警戒心が取れていない。
それは、シンとルイも同じだった。
シンは、パッと立ち上がりルイは、慌ててキラ君を抱き上げた。
「リズ……いや、リゼル何の用だ!?」
「おやおや、そんな警戒しないでよ?
それにリズでいいよ。下手に人間界で、そっちの名前を呼ばれたら怪しまれるからさ
それと俺は、ただ音楽が聴こえてきたから立ち寄っただけだよ?
キラ様。お元気そうで何よりだ」
リズさんは、やれやれとした表情しながらも、キラ君に話しかけた。
もちろん怒りをあらわにするキラ君。
「だう、わぁ……ああう」