しかし本当の黒幕は、違うところで動いていた。
その夜。妖精界の本家では……。

「共倒れとなるとはな……実に欲にまみれた愚かな男じゃった。
 良くやった。イル、アルフレット……そしてリゼル」

「ありがたき幸せに存じます」

 キョウ様の言葉にイルとアルフレット
そしてリズ(リゼル)は、深く跪くと頭を下げていた。
 するとリズがクスクスと笑った。

「しかし上手くいきましたね。
俺が封印を開けて、共倒れになるように仕向けたこと」

「リゼル、言葉を慎め。
キョウ様に対して人聞きが悪いぞ」

「……そうですかね?
俺は、指示された通りにやったまでですけど」

 リズの態度に怒るイルだったが、彼は、しれっと答えた。
 キョウ様は、外の満月を見ながらクスクスと笑っていた。

「良い、良い。今日は、実に気分がいい。
 クラマを仕留めるには『力を封じ』『大人しくさせる』ことに意味があるからのう。
 それならイルの『羽魔の矢』の効き目も強くなる。
 私1人では、同時に能力を使うには難儀で、封印するだけで精一杯だった。
魔力の消耗は、激しいからのう。
 だが実に2人は、いい働きをしてくれたものよう……」

「……そのためだけに2人を転生させたのですか?」

 イルの言葉にキョウ様は、クスッと笑った。

「2人は、強く共鳴していたからのう。
 私は、それに力を貸したまでだ。
あの者に褒美をやらないとならないな。
さて、何がいいかのう?」

「それより……獣族は、どうなさるのですか?
あのままでは、上に立つものが不在です。
 統一させられますが、キョウ様の1人では、大変だと思いますが……?」

 その言葉の間に入ってきたのは、アルフレット様だった。
しかしキョウ様は、フフッと笑っていた。

「その心配はいらぬ。いずれキラに継がせる。
 今は、無理でも成長したら上手くやってくれるであろう。
あの者は、純粋でこことの争いを好まぬ。
 それに本来なら一番の跡継ぎ候補だった子だ。
獣族の者達は、納得するしかないはずじゃ。
 きっといい橋渡しになってくれるであろう」

 そう言いながら不敵な笑みを溢していた。
全ては、キョウ様の手のひらで転がされていたなんて
私達は、何も知る由もなかった……。