静かになった部屋で、床に置かれた二本の刀を、椅子に座ったまま眺める。最初は嵐の中だったので、ただの棒に見えたけど、こうして見ると刀でしかない。

 長い方が普通の刀で、短いのはなんて言うんだろう。脇差だったっけ?

 今のコスプレ用小物って、こんなに本格的な物が売っているんだな。あるいは、模造品か。いくらなんでも、本物は持ち歩かないよね。

 しかしいったいなぜ、台風が近づいているこのときにコスプレをして外を歩いていたのか。謎は深まるばかり。

 しばらく付き添っていたが、彼が起きる気配はない。

 今日は特別疲れた。そろそろ私もお風呂に入って、休みたいな。

 住み込みの寮母である私は、この寮で寝起きしている。とはいえ、知らない男性と同じ部屋で寝るわけにはいかない。

「美晴ちゃん、お待たせ。浴室に着物をかけてきたよ」

 ちょうど眠さが限界に達したところで、寮長が帰ってきた。

「じゃあ、私は失礼します。なにかあったら呼んでください」

 なにを隠そう、私の部屋はこの隣だ。ここと同じ間取りで、広さは十畳。トイレとお風呂は共同──といっても、女子風呂は私しか使わない──なので、寝るだけならじゅうぶんな広さだ。