なるほど、仕事命だったのね。そう思うと、今までなかった食欲が湧いた。パンケーキを頬張った、そのとき。
「今、ホッとしただろ」
頬杖をついた土方さんが、涼やかな目でこちらを見つめる。にやりと笑った口元が、私を挑発しているようだった。
「ばっ、げほっ、うぅっ」
どうして私がホッとしないといけないわけ?
ひとしきり噎せた。涙目でにらむと、土方さんはまだニヤニヤしていた。
「安心しろ。俺に特定の女はいなかった。花街にも、尊攘派の情報を仕入れに行っていただけだ」
「べべべ別に、なにも心配していませんけど?」
「ふうん。そうか」
土方さんは意味ありげに微笑み、食事の残りを平らげていく。
こ、こ、このひと、たらし歴何年なの。きっと若いときは村の女の子を夜這いしたり、奉公先で悪さをしたりしてたんだ。
それを直接聞いて確かめる勇気はなかった。認めたくないけど、そんなことをすれば自分の心が波立つだけだとわかる。女心を手玉に取るのは江戸時代でも現代でも変わらないらしい。
「今日はえらくめかしこんでいるから、てっきり俺のことを……」
「違いますっ!」
違わないけど。土方さんと出かけるから、おめかししたんだけど。売り言葉に買い言葉で否定してしまった。
「ああ。そりゃ残念無念だ」