そうか。時代劇でよく見る、「親同士が決めた結婚」が当然の時代だったんだ。女性が結婚前に男性とデートするのははしたなく、結婚相手も選べず、親が持ってきた縁談を拒否する権利もなかった。

「じゃあ、昔の人って純粋だったんですね。一生ひとりのひとと添い遂げて……」
「そうでもないさ。男は元服したらすぐ花街で女を買うし、素人に夜這いをかけたりもする。結局男も女も、やることはやってた」

 花街は、今で言う風俗街。花魁とか遊女がいるアレだ。夜這いは源氏物語の時代からあったものね。

 図らずしも話題がそっち方向に行ってしまい、気まずくなった。と言っても土方さんは平気な顔で、私だけが照れている。

「土方さんはモテたんでしょ?」

 漫画の中に書いてあった。土方さんは江戸から京都に出てくる前からモテてたって。
 あまりにモテすぎて、島原の遊女からもらった恋文をまとめて実家に送ったなんて逸話もあるくらいだ。

「まあな」

 彼は口の片端を上げ、ニッと歯を見せた。自分が魅力的だというのを自覚しているから、否定しないのだろう。憎らしい。

「でも、奥さんはいなかった。近藤勇さんにはいたのに」
「新選組を切り盛りする方が、面白くてな。女に入れ込んでいる暇もなかった」