私にスマホを渡し、自分の元に来た料理を食べ始める土方さん。まるで機械に弱いおじいさんだ。基本がわかっているようには見えない。
しかし、スマホを見ると、さすが現役男子高生沖田くん。メジャーなメッセージアプリとSNSのアプリがインストールされていた。
メッセージアプリで連絡先を登録し、土方さんに問う。
「SNS、使うんですか?」
「江洲得ぬ江洲とは?」
「ほら、これ……写真とかをインターネット経由で全世界に発信する……」
アプリのアイコンをタップすると、すでにユーザー登録されていることがわかった。ユーザー名はhougyoku55。
「ほうぎょく?」
「俺の雅号だ。豊かな玉と書いて、豊玉。五五は、端午の節句。俺の誕生日だ」
雅号って、つまり、俳句を詠むときのペンネームみたいなものか。なんか、高級な梨みたいな名前。
そして土方さんって、子供の日生まれだったんだ。と言っても旧暦の話だよね。
「俳句を発信しているんですか。見てもいいですか?」
「ああ」
彼が投稿したものを見てみると、すべて例のあんまりうまくない俳句だった。そのせいか、フォロワーはたったの七人。
無意識に渋い顔をしてしまったのか、土方さんは眉間に皺を寄せて呟く。
「発句帳にしたためておくより、そっちの方が便利だと総司が言ったから、そうしたまでだ。別に、大勢に披露したいわけじゃねえから」
強がりだろう。披露する目的じゃなければ、メモ機能もあるんだし。
「ふうん……でもどうせなら」