結局あまり集中できないまま、映画は終わってしまった。

 私たちは近くのカフェに入り、昼食をとることに。

「実にいい時間だった」

 土方さんは心から楽しんでくれたようだ。それならそれでよしとしよう。
映画の感想を言い合っているうち、オーダーしたパンケーキが目の前に運ばれてきた。

「せっかくだから」

 私はフワフワのパンケーキにスマホを向け、写真を撮った。うん、女子みたい。

 寮母になってから、スマホのカメラ機能を使うことはほとんどなかった。ひとりで食べ歩きできるほど心臓も強くないし、寮生とも写真を撮ったことはない。

 卒業式の日に、卒業生が「記念に」と写真を撮ってくれることはあったけど、それは寮生のスマホで撮るもので、私のフォルダは悲しいほどすっからかんだ。

「そうだ、俺もその素魔法とやらを持っているんだった」

「えっ、いつの間に?」

「理事長が、業務連絡用に貸し出してくれた」

 土方さんは、得意げに白いスマホを取り出した。

 全然知らなかった。理事長、身寄りも身分証明書もない土方さんの代わりに、スマホを契約してくれたんだ。さすが。

「使い方、わかります?」

「基本は総司が教えてくれた。ほら、美晴の番号をここに登録してくれ」