しばらくすると慣れたのか、土方さんは最近すっかり気に入った毛唐の泥水、もといコーヒーを飲みつつ、映画を満喫しているように見えた。

 って、私、ちらちら土方さんを見てばかりいる。映画を見なきゃ、映画を。

 前を向き、真面目にスクリーンを見つめたときだった。

「なあ、あれどういう意味だ」

 いきなり土方さんが顔を寄せてきて、耳打ちした。肘掛けに乗せた彼の肩が、私の肩にぶつかる。

 彼の息が耳たぶにかかり、鼻先が頬を掠めた。このまま土方さんの方を向けば、唇が触れてしまいそう。近すぎる距離に、鼓動が暴れだす。

 無理! 近い! 恥ずかしい!

 叫びそうだったけど、なんとか堪えた。体を逸らせて見返した彼は、純粋に質問しただけのようだ。キョトンとしている。

 そうだよね。大きな声を出せないものね。

 口から飛び出そうな心臓を深呼吸で押さえ、質問の答えを土方さんの耳に囁く。

 私より少し高い位置にある土方さんの耳に顔を寄せた。彼の髪の匂いが鼻孔に入り、めまいがしそうになった。