空き部屋にビニールシートを敷いてからコスプレさんを運び込み、寮長とまだ残っていた男性職員の波多野さんが、濡れた着物を脱がせて予備のスウェットを着せた。

 ベッドに横にすると、波多野さんは「退勤の時間だから、あとはよろしく!」と逃げるように走り去ってしまった。

「下着がふんどしとは……本格派のコスプレさんだなあ。しかもかつらじゃなくて地毛。よくここまで伸ばしたもんだよ」

 寮長が呟く。自分で動くことがままならない人の服を脱がせたり着せたりするのは、容易ではなかったらしい。

 髪も濡れていたので、コスプレ用ウィッグだと思って外そうとした。が、どうしても皮膚とのつなぎ目が見つからず、そこでやっと地毛だと気づいたという。

 今は風呂上がりのおばさんみたいに、タオルで髪の毛を包みこんでいる。

「着物、洗濯機で脱水できますかね? 傷むかな」

「うーん、短時間ならいけるんじゃない。僕が持っていくから、美晴ちゃんは彼に付き添ってて」

「わかりました」

 ビニールシートで着物を包み、細身の寮長はうんしょうんしょと濡れて重くなった着物を運んでいった。