「いいってことよ。美晴が楽しめないなら意味がないからな」

「か、かたじけないです」

 いきなり気を使われて照れた私は、なぜか武士言葉になってしまい、土方さんに笑われた。

チケットとポップコーン、飲み物を買った私たちは、指定された劇場に入った。

 ちなみに理事長に給料を前借りした土方さんは、自分の分は自分で出すと言い、財布を取り出した。その財布が時代劇に出てくるような布を紐でくるくる巻くタイプだったので、隣の券売機にいた人に笑われた。

 ほんと、ひとつひとつが違うんだもんな。同じ国なのに、二百年も経っていないのに、こんなに文化が変わるなんて。

 隣に座った土方さんは、大きなスクリーンを見てあ然としていた。

「こりゃあテレビの比じゃねえ」

 食堂で初めてテレビを見たときも、めちゃくちゃ驚いていたっけ。「薄い板の中で人間が動いている!」って。

 やがて映画が始まった。土方さんは大きな音に顔をしかめ、耳を塞いだ。映画館に入る前に、やたら騒いだり大きな声を出してはいけないと言っておいたので、驚いた顔をしていても、静かにしている。

 うん、映画館っていいな。デートの定番なの、わかる気がする。薄暗いから自分の容姿のアラは相手に見えないし、余計なことを話さなくていい。