せっかくだから、現代でしかできないことをしよう。なんて思ったけど、そもそも江戸時代のデートを知らない。
いや違う。さっきから何度もデートと錯覚してしまっているけど、違うんだから。デートっていうのは、想いあっている男女がするものであって、私と土方さんはただの同僚だから。
「映画を見に行きましょう!」
「映画?」
「ええと、すっごく大きなテレビに映る、だいたい二時間くらいの長編物語です」
「ほう、どんなものか気になるな」
私の提案を土方さんは快く承諾した。車もないし、学校に行った寮生が帰ってくるまでに戻ろうと思うと、そこまで遠出することもできない。映画館なら、少しバスに乗るだけで行ける。
映画館に着いたらチケット売り場へ。迷ったけど、今一番人気のあるアニメ映画を選択した。子供も見られる冒険ものだ。同じ制作会社が作った映画は昔から有名で、定評がある。今回も間違いなさそうだ。
「こっちはどうだ」
土方さんは、時代劇の看板を指さした。着物姿の俳優が剣を構えて立っている。やはり、そういう方が好みなのだろうか。
「いや私……血とか苦手なので……」
看板の煽り文句にも『斬って斬って斬りまくる!』と書いてある。十八歳以下は鑑賞禁止。これは怖い映画に決まっている。
「そうか。じゃあよそう」
「すみません」
私は往来で人が斬り合っていた幕末では、暮らせないだろう。