「いやべつに、デートじゃないけどさ」
こんなことなら、この前土方さんの服を買ったときに、自分のものも見てくればよかった。
髪も伸びっぱなしだし、化粧品なんていつ買ったのかわからないようなものばかりだし。
私は自分の女子力のなさに打ちのめされたのだった。
いくら仕事ばかりで出会いがなくても、もう少し自分に時間をかけるべきだった。
後悔しても遅い。出発予定時刻は刻一刻と迫っている。
私は一着だけあったスカートに、一番新しいトップスを合わせた。髪はアップにし、少しだけお化粧もした。
ああ、バッグもろくなものを持っていない。悲しい。
大学生のときから使っているショルダーバッグを肩にかけ、慌てて部屋を出ると。
「あ……」
向かいの廊下の壁に、Tシャツとジャケットに着替えた土方さんがもたれて立っていた。私が出てきたのに気づき、顔を上げて微かに笑う。
「おう。行くか」
うわあ……。なんだかすごく、待ち合わせっぽい。部屋、隣同士だけど。
照れくさくかったので、小さく頷くだけにした。私と土方さんは、並んで寮を出た。