「土方さん。もしよければ、一緒に外出しませんか?」
とんとんと肩を叩くと、土方さんがゆっくり振り向いた。その目は、きらきらと期待に輝いていた。
「外出? ならば京に連れて行ってくれるか?」
「うっ。京都はちょっと遠いので、今日は無理ですけど……」
明らかに土方さんの顔が曇った。だから、最初にここは三河だって言ったじゃん。いくら交通機関が発達したとはいえ、思い付きで行けるほど、京都は近くない。
「その代わり、面白いところに連れていきますから」
なんとかその場をとりなそうと、笑顔で土方さんの顔をのぞきこむ。すると土方さんはふっと表情を和らげた。
「本当だな? じゃあ、頼む」
「はい、こちらこそよろしくです!」
初めてのお誘い、成功! 振り返ると成瀬さんがニコニコしていた。
土方さんはスウェット姿だったので、お互い着替えて集合することに決めて一旦部屋に戻った。
「ちょっと待って。なにを着ていけばいいの?」
男性と二人きりで出歩くなど初めてのことなので、戸惑うしかない。
いつも、動きやすさを第一に選んでいる服の中に、デートができるようなものはなかった。