局中法度ならぬ、寮中法度ができてから数日後。九月も下旬に差しかかったある日、私と土方さんの非番が重なった。

「暇だとつまらねえことばかり考えていけねえな」

 土方さんは食堂でぼんやりとテレビを見ていた。

 仕事を一生懸命していれば気が紛れるけど、暇だと幕末のことばかり考えてしまうのだろう。

 なんとも言えない哀愁を漂わせる土方さんの背中を見て、栄養士の資格を持つ職員、成瀬さんが私に耳打ちした。ちなみに成瀬さん、四十代で中学生の子供さんがいるお母さんだ。

「いい若者が、テレビ見てぼんやりして。たまには寮の外に出たら? 美晴ちゃんがいれば、彼だって大丈夫なんじゃない?」

 成瀬さんの子供さんも情緒不安定で、よく学校を休んでしまう。なので、ちょっと事情は違うけど訳ありな子供の力になりたいと、この寮で働くことにしたらしい。

 土方さんを見ていると、引きこもりがちな自身のお子さんと重なってしまうのだろう。心配そうな顔をする成瀬さん。

「わかりました。誘ってみます」

 たしかに、ずっと寮の敷地の中にいたんじゃ、土方さんも息が詰まるだろう。

 だけど、自分から誘うの、勇気がいる。すでに緊張してきた。自慢じゃないけど、私はこれまで男性と付き合ったこともなければ、デートをしたこともない。

 深呼吸してから、土方さんの背後から声をかけた。