今まで厳しく統率してくれる人、寮生に言うことを聞かせられる人がいなかったので、彼らが土方さんを頼ってしまうのはわかる。

 でも私は力や恐怖で押さえつけることがいいとは思わない。こんな規則、必要あるのかな。

「ちなみにこれ、新選組の局中法度そのままだから」

 沖田くんがそっと耳打ちしてきた。

 やっぱり、使いまわしか。見たことがあると思ったよ。

「規則を破ったら逆さ吊りにされるんじゃないでしょうね」

「さすがにそれはしないでしょ。でもあの鬼副長なら、寮生のトラウマになることをやりかねないね」

「やめてよ!」

 ふふふ、と沖田くんがわざとらしく笑った。不安を煽らないでほしい。

「大丈夫だよ。よく見て。普通のことしか書いてない。今までと一緒だよ」

 彼が一際高い声で言うと、おとなしめの寮生たちがうんうんと頷いた。

「沖田の言う通りだ」

「今まで通り、門限を破らず、平和に暮らしていればいいだけだ。ただ……」

 加瀬くんはじめ、やんちゃな寮生たちは思い切り顔をしかめている。

 そう、この規則、たいして難しいことはない。ただ、最後の項目が問題だ。

「私の闘争を許さず」。ケンカをしないなんて、難しい。人が集まれば、衝突が起きるのは当たり前だ。