すらすらと話をしている彼の口調から、この規則みたいなものが今作られたばかりではないことは明らか。まさか、新選組の掟をそのままこの寮に適用させようっていうんじゃあないでしょうね?

「最後に。これが一番大事だ。一、私の闘争を許さず」

「お、おい行こうぜ。このおっさん、やべえよ」

 その場にいた加瀬くんが、周りの寮生に訴えかける。

「待て。意味を教えてやる」

 土方さんが加瀬くんの腕を掴んだ。加瀬くんは以前、抵抗して余計痛い目に遭ったからか、今回はおとなしくしている。

「いいか。ガキにもわかりやすく言ってやる。寮生同士でケンカすんじゃねえってことだ。ケンカを売ったやつは切腹……じゃねえや。俺が仕置きをしてやる」

 加瀬くんの顔が青ざめた。逆さ吊りアンド五寸釘の話を思い出したのだろう。堅気じゃないと思われても仕方ない。

「これは理事長のお墨付きをもらった、あたらしい隊規、じゃねえ、寮規だ」

 ざわめきが一層大きくなった。

 知らなかった。いつの間に、理事長に会いに行っていたのか。

「うんうん、これくらいあっていいんじゃないかな」

 いつの間にか寮長や波多野さんも近くにいて、土方さんが書いた寮規に拍手を送っていた。