「ええい、仕方ない」
私は走り、職員室に寮長を呼びにいった。
「不審者?」
寮長は吹き飛ばされそうになりながらも、裏庭に出てきた。倒れた男を見て、同情したような顔つきになった。
「こんな天気のときに、悪いことをしようと思って来ないだろう。寮には金目のものもないんだし。きっと迷い込んだんだよ」
迷い込んだって、犬や猫じゃないんだから。大人で、しかもコスプレして道に迷うことってあるかな? 記憶喪失になっちゃったとか?
「熱があるみたいで」
「中に運んであげよう。責任は僕がとるから」
寮長は優しすぎて、寮生にもなめられている。彼らが職員の言うことを聞かないのは、寮長のせいだという職員もいる。
しかし、今回は私も同意した。この天気だ。他の怪我人や病人に対応できなくなってしまっては困るから、救急車を呼ぶことは控えよう。そして、熱を出して倒れている人をこのまま放置はできない。
こうして私たちは、不審なコスプレさんを寮の中に招き入れることになったのだった。