とくんとくんと、胸がいつもより早いリズムを刻む。

 土方さん、私を庇ってくれたんだ。私のために、怒ってくれた。

 それだけじゃない。他の職員がどんなにたしなめても、説教をしようとしても、笑いながらかわしていく寮生を怒らせた。彼らの心に、なにかが響いたということだ。

 土方さんには、人を引きつける魅力がある。見た目だけじゃなくて、魂に引力が発生しているみたい。

 みんな彼がいると見ずにはいられない。彼が話すと聞かずにはいられない。私のようなちっぽけでつまらない存在とは違う。不思議と無視できない存在なのだ。

 やっぱり、歴史に名を残す人は、一般人とは違うんだ……。

「ところで、帰署居とはなんだ?」

「キモイってことです」

「肝煎とは違うのか」

 沖田くんと頓珍漢なやりとりをした土方さんは、涼しい顔でカウンターの中に戻ってきた。

「あいつら、美晴に構われたくて仕方ねえんだな」

「ええ? そんなことないですよ。いつも軽くあしらわれてますし」

 あはは、と沖田くんが笑った。そこ、笑うとこじゃないと思う。

「おっかさんと一緒だよ。男はあれくらいの年頃になると、母親と距離を置きたがるものなんだ。強がってな」

「はあ」