「いいか。天井から吊るして、足の裏に五寸釘を刺して、火をつけた蝋燭を立ててやる。そのあと棒で滅多打ち、最後に水攻めだ。謝罪するまで水瓶に頭を出し入れするからな」
他の人が言ったら笑っちゃうところだけど、土方さんなら本気でやりそうな気がして怖い。なにせ彼は怖いものなしの新選組副長だ。その顔は作り物のように端正すぎて、逆に恐ろしい。
すっかり青ざめた加瀬くんは、かわいそうに、なにも言えずに震えている。仲間も怯え、加瀬くんに手を貸すことすらできないでいた。
「冗談だ。本気にするな」
土方さんにお尻を叩かれた加瀬くんは、弾かれたように立ち上がった。
「わかってんだろ、お前らが一番。自分の誇りを自分で傷つけるんじゃねえ。誰かを傷つけたって、お前らがそいつより幸せになれるわけはねえ」
「幸せ……」
「美晴が困った顔でなんでも受け入れてくれるからって、甘えるんじゃねえ。やっちゃいけねえこと、言っちゃいけねえことは親子だってあるんだ」
甘える? 寮生たちが私に甘えているって言うの? 「なめられている」の間違いじゃないかな。
加瀬くんは顔を真っ赤にしたまま私たちに背を向け、早足で立ち去った。後のふたりも口々に暴言を吐きながら彼に続いた。
「おい! メシの時間には遅れず来いよ!」
ラ行巻き舌が、余計に圧を感じさせる。しかし言っている内容は、意外に親切だった。