聞くに堪えない暴言だ。さすがの私も、堪忍袋の緒が切れそう。理事長、ごめんなさい。私、こんなかわいくない子たちの母にはなれません。

「下品だなあ、先輩たち。いくら女子に飢えているからって、変な想像するのやめましょうよ」

 沖田くんが眉を顰めて言うと、彼らは突然怒り出した。もしかして、私たちを庇ってくれているのかな。

「誰が飢えてるって?」

「先輩たちですよ。親の愛情にも飢えて、世間一般の女性にも相手にされなくて、可哀想なひとたち」

 土方さんをバカにされ、誰よりも沖田くんが腹を立てていたのだろう。だんだんと嫌味っぽくなっていく。

 ああ、ダメだよ余計に刺激しちゃ。

「うるせえ! お前、生意気なんだよ!」

 ほら、言わんこっちゃない!

 加瀬くんが、握った拳を大きく振りかぶった。それが突き出された瞬間、沖田くんがひょいと身をよじってかわした。

「きゃっ!」

 暴力的な拳は、私の目の前のカウンターを強打した。大きな音に驚き、身をすくめたとき。

「おい」

 隣から低い声が聞こえ、そちらを見る。土方さんが、加瀬くんをにらんでいた。息を呑むほど狂暴な目つきで。

 なんという威圧感。加瀬くんたちが慄いているのがわかる。これが、新選組副長のオーラか。

「なんだよおっさん」

「ここにいられるのは、十五から十八の男だ。ガキは出ていきな」