そう、ここにいるということは、そういうことなのだ。寮生も職員も、関係なく。

「まあ、おっさんの事情なんてどうでもいいけど」

 クスクスと笑いながら、彼らは近づいてきた。

「美晴、キショイんだよ。顔のいいやつが入ってきたからって浮かれてんじゃねえよ」

「はいっ⁉」

 とうとう反応してしまった。彼らは年上の私を呼び捨てにする。それはまだいい。

 私、寮生の前で浮かれた態度なんてとっていない。というか、浮かれてなんていない。

 いくら土方さんがイケメンだろうと、優しかろうと、寮生の前では私は母親だ。女性の顔をしないように気をつけているつもりだ。

「そんなこと……」

「俺ら見たんだよ。この前、真っ暗な食堂でこいつら寄り添って仲良く話してた」

 沖田くんが目を丸くしてこちらを見る。

 いやいやいや、違うよ沖田くん! 私たち、あなたが思うようなことはしてないから! 寄り添ってないし。

「部屋は別々みたいだけど、隣同士だし。いいよなあ、好き放題できるよな」

「俺らの部屋にまで聞こえてくるような声出さないでくれよ。美晴の喘ぎ声なんて聞きたくないし」