隠れてお酒やたばこを嗜もうとする子、服装を個性的にカスタマイズする子、やたらケンカっぱやい子、女の子を連れ込もうとする子などはいるが、コスプレは見たことがない。

　とにかく、このまま放っておいたら、大変なことになる。早く起こして中に運ばなきゃ。私は意を決し、彼の横にひざまずいた。

「もしもーし。大丈夫ですかー？」

　バンバンと強く肩を叩くと、彼は「う……」と呻いた。体が動く気配があり、咄嗟に身を引く。彼は体を反転させ、仰向けになった。

　眉根を寄せる顔は、目を閉じていても美男だとわかる。白い肌、整った顔。しばし見惚れてしまったけど、我に返った私は重大なことに気づいた。

　この人、寮生じゃない。職員でもない。

　寮生の顔は全員分ちゃんと記憶している。そもそもの人数が数十人と少ないのだ。間違えようがない。

　しかも、どう見ても彼は二十代後半だ。高校に通う寮生とは年齢が合わない。としたら、彼はコスプレで不法侵入してきた不審者だ。

「やっば……」

　どうするべきか。警察を呼ぼうか。この台風の中、来てくれるかな。

「うう……」

　苦しそうに呻く彼の額に、おそるおそる手を当てる。ハッとするほど熱い。どうやら熱で意識が朦朧としているようだ。

　迷っている間にも雨は強まり、風は全てを吹き飛ばす勢いで荒れ狂う。