「そうだ、藩馬具。そんな名だったな」

 にっと笑った土方さんは、ハンバーグのタネをすべてが同じ重さになるように計り、さっさとまとめていく。

「手つきがいいですね。ねぎの切り方といい、未経験者だったとは思えません」

「そうか? そう言われると悪い気はしねえな」

 彼は頭の回転が速いのか手先が器用なのか、なにをやらせても要領よくやる。こういう旦那さんがいればいいなあ……なんて一瞬考えてしまい、勝手に頬を熱くした。

 そんな私をよそに、彼は天板にハンバーグを乗せ、オーブンに入れる。焼きあがるまでに片付けと、副菜の準備をしなくては。

 黙々と作業をしていたそのとき、食堂の隅から話し声が聞こえてきた。

 近くで作業を見ていた沖田くんが振り返る。私もそちらを見ると、三年生の寮生が三人いた。

 彼らは明らかにこちらを見てこそこそとなにかを言っている。嘲笑するような、悪意を含んだ目線を向けられ、居心地が悪くなった。

 沖田くんは彼らを見てはいるものの、声をかけたりはしない。土方さんは彼らに気づいているのかいないのか、おばさんの作業を手伝っていた。すると。

「よう、沖田。やけに親しそうだけど、そのおっさんと知り合いなのか?」