この前は沖田くんに厳しかったけど、私にはなんだかんだいつも優しい。
ぶっきらぼうな口調の裏に、優しさを感じるんだよね。
「一句浮かんだぞ。粉々の 肉をなぜまた まとめるか」
力強く肉をこねる土方さんの腕の筋に見惚れていたら、彼が口を開いた。
「えっ。今のもしや、俳句ですか。季語が入っていませんよ」
五七五のリズムしか合ってない。もしかして、笑わそうとしたのか?
「俺としたことが。肉をこね まとめて焼くもの 秋の風 これでどうだ」
「……ああ、そこはかとなく秋を感じ……る、ような、うん……」
どうやら、至極真面目に作った俳句のようだ。ちょっと何を言いたいのかわからないけど、ツッコむのをためらうくらい、彼の表情は真剣さで満ち溢れている。
幕末って俳句を詠むのが流行っていたのかな。私も俳句をよく知っているわけじゃないけど、土方さんがあんまり上等な詠み手じゃないってことは、なんとなくわかった。
剣の達人で、戦術の天才で、役者のような美丈夫。完全無欠に思えるのに俳句は下手だなんて、ちょっとかわいい。
「ただいま、土方さん、美晴。今日のメニューは何?」
食堂のカウンターの向こうから、学校から帰ってきた沖田くんが顔を覗かせた。
「おう。今日は……なんだ? 粉々にした肉を、なぜかまた混ぜくりかえして小判型にまとめて焼く珍妙なやつだ」
「ん~わかった! ハンバーグだ!」