その日の昼過ぎ、土方さんと私は、並んで夕食の準備を始めた。今日のメニューはハンバーグ、その他副菜だ。
「うちでは冷凍のものはあまり使わないんだよ。ほとんど手作りさ」
パートのおばさんが、得意げに言った。
うちの寮では理事長の方針で、栄養バランスを考えた手作りの食事を出すことになっている。栄養士の資格を持った職員が作った献立に沿って、三品から四品を作る。
お味噌汁担当の土方さんは、器用にねぎを刻む。さすが、刃物の扱いがうまい。感心していると、彼がこちらの手元を覗き込んだ。
「それは肉と何を混ぜている?」
「パン粉、豆腐、玉ねぎとえのきのみじん切りです。豆腐やえのきを肉より多くすると寮生に気づかれるので、絶妙な配分でやるのがコツです」
「ふむ。代われ」
「え?」
「そっちの方が力がいるだろう」
土方さんは手を洗い、私の肩を後ろから持って、すっと左に寄せた。私が呆然としている間に、土方さんはぐいぐいと巨大ボウルの中の材料をこねはじめた。
「あ、ありがとうございます」
幕末でモテていただけのことはある。土方さんって自然と女性をドキッとさせることをするというか……私に免疫がないからそう思うのかな。