「もしかして、土方さん知らないの?」

「なにをだ」

「ここは、新選組と一緒ですよ。様々な事情を抱えた行き場のない子供が集まっている場所なんです」

 沖田くんの言うとおりだ。及川学園理事長は、行き場のない子供たちを保護する場所として、この寮を作った。

 彼のような事情より、もっとひどい過去を抱えた者もいれば、完全に自業自得で親に見放された者もいる。

 共通して言えるのは、彼らは全員、生まれた家庭と縁がなかったということだ。

「……どうして黙っていた?」

 土方さんの低い声が、私に問う。

「先入観を持ってほしくなかったからです。ここにいる子は可哀想だと、憐みの目で接してほしくなかったから」

 うつむいたまま、私は小さな声で答えた。沖田くんが呆れたようなため息を漏らす。

「たしかに憐れんでほしくはないね。でも美晴も実はそう思ってんじゃないの。いつもいつも、寮生に愛想笑いしてさあ──」

 そんなことはない。反論しようと思ったけど、やめた。口にするほど嘘くさくなりそうで。

「黙れ、総司」

 沖田くんの発言を、低い声が封じた。

「俺の恩人に無礼を働くことは許さねえ」

 顔を上げて横を見ると、土方さんは鋭い目で沖田くんを見据えていた。庇ってもらった私まで縮み上がってしまいそうだ。