「そうです。あなたと同じ時代に生きていた僕は、とっくに死んでいます。今ここにいる僕は、新しい体に転生したんです」

「とっくに……」

 淡々と語る沖田くんとは対照的に、土方さんはうつむいた。その横顔が翳る。

「そうか。この世は池田屋事件から百五十年以上先の世だもんな。あの頃の仲間はみんな死んじまって、いねえんだよな」

 当たり前のことを確認するように呟く彼は、いつもより小さく見えた。

「沖田くんは、小さな頃から前世の記憶があるって言ったよね。そういう人が他にもいるのかな? ネットで探してみる?」

 幕末の仲間は、令和ではみんな鬼籍の人になっている。でも、こうして生まれ変わっていたら、また会える可能性はある。

 希望を込めて提案してみたけど、沖田くんはふるふると首を横に振った。

「僕は今まで生きてきて、当時の仲間に会ったことはないよ。ネットで探して、誰が本気にすると思う? イタズラメッセージが来るだけじゃないかな」

「そうだよね……」

 転生の細かいシステムはわからないけど、そう都合よく昔の知り合いが同じ時代で近所に生まれ変わるわけもないか。そうだったら、親兄弟、ご近所さん、みんな原始時代からの知り合いになっちゃう。そもそも、前世の記憶を持っている人がまれか。

「ぶっちゃけ、僕は幕末の沖田総司とは同じ魂を持っているけど、別人です。でも、今も新撰組や近藤さん、土方さんのことは好きですよ。いつか会えたらいいなって夢見てました」