「ただいま!」
ノックもなく指導室の扉が勢いよく開いた。金茶色の髪を揺らし、土方さんよりも長身の沖田くんがかわいい顔をのぞかせる。
「おかえりなさい。一応鍵をかけておいて」
「わかった。ってか美晴は夕食の準備に行かなくていいの?」
「今日は別の職員が当番だから」
沖田くんは今まで見たこともない笑顔で「そっかあ」と返す。土方さんの正面に座ると、男同士で見つめ合った。
「土方さん、本当に幕末から来ちゃったんですか?」
聞かれ、土方さんはこくりと頷いた。
「そのようだ」
「どうやって?」
「俺にもさっぱりわからん」
土方さんは自分で、元治元年九月に川に落ち、気づいたら現代の、この寮の裏庭に倒れていたことを沖田くんに説明した。
「元治元年九月っていうと、禁門の変のあとか」
沖田くんはささっとスマホで新選組の年表でも検索して確認したのだろう。ううんと唸った。
「お前もその面妖な箱を持ってるのか。こっちじゃ少しでも暇があると、みんなその箱をにらんでるな」
「ああ、スマホ? 便利ですよ。今度買いに行きますか?」