寮生たちが登校すると、寮はただの抜け殻となる。私はこの静けさが、嫌いではない。

 昼のうちに事務仕事や夕食の仕込み、掃除、足りない物の買い出しなど、寮長や他の職員と手分けして行った。

 土方さんはずっと私と一緒にいて、仕事を覚えた。パソコンの操作やお金の種類など、全く違う文化の人にそれを教えるのは、思ったよりも難しい。

 しかし彼は、文句ひとつ言わず、じっと耐えているようだった。渡したメモ帳に鉛筆で、カリカリとメモをしていた。

 夕方になり、寮の玄関がざわざわしだした。寮生が帰ってきたのだ。

 私はそわそわしている様子の土方さんを指導室に連れていった。

 指導室とは、悪いことをした子に寮長が話をする、いわゆる説教部屋だ。普段はほとんど使っておらず、鍵がかかっている。

 簡素な長机とパイプ椅子しかない部屋に二人並んで座っていると、容疑者が連行されてくるのを待っている刑事のような気持ちになる。

 土方さんは、腕を組んでじっと待っていた。

 私だったら、朝から落ち着かず、上の空になり、仕事も手につかなくなるだろう。なのに土方さんは心ここにあらず状態には決してならなかった。