帰りは、行きとはまったく違う意味で、土方さんは周囲の視線を集めていた。

 私も行きとは真逆の意味で恥ずかしい。不審者と歩く気まずさから、壮絶なイケメンと歩く気まずさに変わってしまった。

 自慢じゃないけど、私は特別かわいくも美人でもない。不釣り合いだって思われているんだろうな。

「こんなポテンシャルを秘めているなら、先に言っておいてほしかった……」

「なにか言ったか?」

「い、いいえ。お腹が空きましたね。なにか食べていきましょう」

 自分でも現金だと思うけど、大変身を遂げた土方さんに、胸が高鳴ってしまう。ただ髪型と服を変えただけで、こんなに違うなんて。

 戸惑いを隠し、ランチのお店を探すことにした。

 服の大人買いは痛い出費だけど、これだけの成果を見せてくれたなら私も満足だ。たまには外の世界を満喫して帰ろう。

 大学を中退して今の職に就いた私は、仕事に明け暮れており、寮の用事以外では滅多に外に出ない。地元から出てきたので、友達もいないのだ。

 通りかかった感じのいいカフェに入り、パスタランチセットとコーヒーを二人分オーダーした。平日だからか、店内はさほど混んでいない。

 土方さんはコーヒーを見て「毛唐の泥水なんぞ飲めるか」と突っぱねたけど、私がしゅんとしたらしぶしぶ口を湿らせる程度にすすった。すると存外気に入ったらしく、「泥水にしては風味がいいな」などと言っていた。