土方さんは色とりどりの服に囲まれて呆気に取られるばかりで、とても選べる状態じゃない。
とりあえず、面接と言えばスーツだよね。ここならカジュアルではあるけど、安価でスーツも揃えられる。
私はそのあたりにあったマネキンが着ているのと同じスーツを捜し、土方さんに渡した。
「試着してみてください」
「うむ……」
不安げに試着室に入った土方さん。着替えてカーテンを開けた瞬間、私は息を詰めた。
「おかしくないか?」
ただの白いシャツに紺色の細身のジャケットと、セットアップできる同じ色のズボンを穿いただけなのに、その姿は驚くほどさまになっていた。近くにいた店員さんも、ぼーっと見惚れるほどだ。
「お、お似合いです……」
かっこいいと、素直に思った。だけど、口には出せなかった。
「そうか。自分ではよくわからんな。美晴がいいと言うならいいだろう」
困ったように笑う土方さんを見たら、胸の奥がきゅんと小さく鳴ったような気がした。
ともかく、サイズがわかったので、スーツの他に無難な色のTシャツとパンツをそれぞれ三着ずつとスニーカー、面接用のビジネスシューズとネクタイも買った。これで当分の間はしのげるだろう。
すっかり現代イケメン社会人になった土方さんは、スウェットと新しい服を入れた大きな紙袋を持った。
着物の時にはわからなかった、男性らしい体のラインが嫌でも目に入る。
剣で鍛えていたからだろう。全身に筋肉がついていることが服の上からでもわかる。といっても、ゴリラみたいでは決してない。