「どうだ。さらに男前になったか」

 得意げに胸を反らす土方さん。もともと男前だという自信が溢れている。

「はい……びっくりしました」

 こくりとうなずくと、土方さんは満足げに笑った。

「あ、あとは服を変えたらさらに男前になりますよ」

 完全に首から下が別ジャンルになってしまっているので、早くなんとかしたい。イケメンなのにもったいない。

 店員さんにお礼を言い、会計を済ませ、店を出た。

 服を買うといっても、私も高給取りではない。家賃光熱費、食費がかからないとはいえ、おしゃれなブランド品を買うほどの余裕はない。

 美容院からすぐ近くにある、全国的に有名なファストファッションの大型店に入る。なにを隠そう、私の服もここのものばかりだ。

「ここは呉服屋か。もう仕立ててあるということは、さては古着だな?」

 昔は、呉服屋で反物を買い、それを仕立てていた。しかし高価なので、庶民の間では古着屋が人気だったという。着物は糸をほどいて仕立て直すこともできるからだろう。

「全部新品です。現代では買ってすぐに着られるものばかりですよ」

 シンプルで動きやすい。そして安い。服は機能性に優れていればそれでいいのだ。

 私はスウェット姿の土方さんを尻目に、まず下着を何点かカゴに放り込んだ。

 男の人のものを買うのは、初めてだ。寮生は土日の自由時間に、買い物にいく。私が代理で買い物をすることはほとんどない。

「男の人の服なんて、わからないよ……」

 自分もオシャレという言葉からは遠ざかっている。普段から動きやすい服装しかしていない。