ちゃんと幕末に帰ることができたのか心配で、後日三人で新選組の資料を図書館で読み漁った。が、新選組の歴史にも、日本の歴史にも、特別変わったことはなかった。土方さんが元治元年に行方不明になった記録も、なかった。

 彼は生涯独身を貫き、三十五歳でその人生の幕を閉じていた。

 土方さんが使っていたスマホは、解約されてしまった。が、本体は大事にしまってある。画像や動画はは残っていて、いつでも見返すことができる。

 公園で自撮りしたツーショットも、ふざけたショート動画も。下手な俳句も。

 それらを見るたびに土方さんを想って切なくなるから、過剰に見ないようにはしている。

 ちなみに加瀬くんは、寮長に事情を話した結果、お咎めなしということになった。怪我も思ったほど大したことはなかった。髪を短く切り、原田先生に言われた通り、ちゃんと就職試験を受け、内定をもぎとってきた。

 彼が就職活動をしなかったのは、自分の未来など想像できなくて、考えれば考えるほど不安になるからだったらしい。私は加瀬くんの気持ちが少しわかる。

 逃げていた自分がバカだったと、あとで先生に漏らしたとか。意外と繊細なのだ。