──長ぇ夢を、見ていたようだ。
「土方先生!」
呼ばれた俺は、重い瞼をなんとか開ける。瞼の間から見えたのは、薄汚れた軍服を着た兵士だった。
ずいぶん昔の夢を見ていた。いや、ずっと未来の夢か。
背中に草の感触を覚える。どうやら、木陰に寝かされているようだ。
ああ、そうだった……ここは函館だ。
「……戦いは、どうなった」
腹に力を入れると、突き刺すような痛みを感じた。
「話してはいけません。傷に障ります」
まだ少年のような若い兵士は、俺の腹を見て、涙ぐんだ。
そうか。俺はもうすぐ死ぬんだな。
今朝からのことをぼんやり思い出す。明け方に敵の砲撃が始まり、俺は新選組を率いて出陣した。
味方に指示を出していると、敵の銃弾に腹を裂かれ、馬から落ち、地面に叩きつけられた。まだ生きているのが不思議なくらいだ。
「負けたか」
俺がいなけりゃ、新選組は烏合の衆だ。古参の隊士なぞ、ほとんど残っていない。
近藤さんも死んだ。総司も死んだ。原田も死んだと、人づてに聞いた。
俺だけが、ここまで生き残ってしまった。
「いいえ、まだです」
兵士はそう言うが、そんなわけはない。結局は無駄なあがきだったのだ。