「もうひとつ、約束してください」

 涙で声が震えた。息がしづらくて、ほとんど悲鳴に近かった。

「幕末に帰ったら、絶対にあなたの信じる道を貫いてください」

 近藤勇さんの最期を知ってしまった彼が、幕末でどうするのか私にはわからない。

 彼は歴史を変えられるかもしれないし、大きな時代の流れには抗えず、同じ結果になるかもしれない。

 それでもどうか、強く前を向いて、自分の信じた道を進んで。それがきっと、あなたにとって一番いい。

「おう。約束する」

 私の髪に伸びた彼の指が、目の前で消えていく。

 強くうなずいた私に、土方さんは目を細めて笑いかけた。

 約束するよ。私も前を向いて生きていく。振り返ることも、くじけそうになることもあるだろうけど、何度だって立ち上がるよ。

「もう、私なんかって言うなよ。お前はかわいいんだから」

 残り少ない時間で、土方さんは懸命に想いを伝えてくれようとしている。それがわかるから、余計に涙が溢れた。

「俺はお前に惚れてた」

「私も……。私も、土方さんが……大好きです!」

 絞り出すような声を聞き、彼は一層優しく微笑んだ。柔らかな、ひだまりのような笑顔で。