「どうして僕も行かなきゃならないのさ」
「ひとりでこいつを支えるのはしんどいからだよ。美晴ちゃんは多分脳震盪を起こして一時的に気を失っただけだし、土方さんがいれば安心だしな」
チェッと舌打ちをし、沖田くんは原田先生と一緒に加瀬くんを支え、車に乗せた。二人もそれぞれ運転席と助手席に乗り込む。
「じゃあな、ふたりとも気をつけて。美晴ちゃん、他の症状が出たらすぐに病院な」
「寄り道しないでよね」
原田先生が運転する車は、静かに発車した。これから病院に行くと、帰りは深夜になることだろう。
三人の乗った車が見えなくなったところで、街灯に照らされた土方さんが口を開いた。
「おい、美晴」
ドスの効いた声だったので、自然と身が震えた。
「はい?」
「お前、どうしてひとりで討ち入ったんだ。怪しいと思ったら俺を呼ぶのが筋だろうよ」
討ち入りって。池田屋事件と忠臣蔵くらいでしか聞いたことないよ。
「いやだって、あんなにたくさんいると思わなくて。加瀬くんが放置されているだけだと……」
懸命に言い訳していると、怖い顔の土方さんが私を乱暴に引き寄せた。