地鳴りのような声に、周りが怯む。土方さんは右から来た敵に回し蹴りを食らわせ、後ろにいた敵の手首を叩いて武器を落とした。そのまま刀を跳ね上げ、大きく鉄パイプを振り上げた敵の顎を打つ。

 強い……。

 ドラマや映画で見るのとは、まったく違った。彼の動きを目で追うのが精いっぱいだ。

 土方さん、加瀬くんだけじゃなく、私のためにも戦ってくれている……。

 不安で震えていた胸が、いつの間にか熱くなっていた。違う意味で涙が滲んでくる。

 今まで、彼以外に私を守ろうとしてくれた男の人はいなかった。
 彼は私を、つらい記憶からも救いだそうとしてくれている。
 私はひとりじゃない。これからは土方さんがいる。でも。

 こんなに強い彼が、現代で寮母をしているのは、やっぱり間違っているのかもしれない。

 この人の能力を、心意気を、本当に必要としている時代は、今じゃないのかもしれない。

「俺の女だって。トシさん、やるなあ」

 原田先生の感心したような声に、顔が熱くなった。

 先生は土方さんや沖田くんに当たらないように器用にモップを振り回し、二人同時に胴を払って壁に激突させた。

「左之さん、健在じゃないですか」