「警察なんざ、最初からあてにしてねえさ。俺たち三人でじゅうぶんだ」
「なにっ」
「金が欲しけりゃ、自分で稼ぎやがれ。女を抱きたきゃ、惚れられるような男になりやがれ。それができねえんなら、おっかさんの乳でも吸って寝てな!」

 地獄の底から響いてくるような低い声が、空気を震わせた。
 しばらく口をぱくぱくさせていたリーダーが、ハッと我に返り、叫び返した。

「なんだと! くそったれぇぇぇ!」

 漫画の悪役でも叫ばなさそうな品のない言葉を彼が吐くと、周りの男たちが呼応するように三人に襲いかかった。

「土方さん、さすがに抜いちゃダメだよ」

 倉庫に置いてあった角材や鉄パイプを武器に殴りかかってくる敵を、ひらりと軽やかにかわし、沖田くんが土方さんに声をかける。

「町人相手に抜くかよ」

 土方さんは鞘をつけたままの日本刀で、振り下ろされた鉄パイプを受け止め、ぐるりと回して受け流す。よろけた相手の脇腹を、素早く柄の先で打った。相手は倒れ、痛さに呻く。

 なんだか、寮母の仕事をしているときよりよっぽど、目が輝いて、生き生きしているような気がする。

「殺しはしねえ。だが、俺の女と寮生を傷つけた償いはきっちりしてもらう!」