彼らの顔を見ていると、私を風俗店に売ろうとした義父や、迎えに来た男たちを思い出した。嫌悪感が喉までせり上がってくる。

「私たちは人質なのね。じゃあ、加瀬くんを解放して。加瀬くんにお金を持ってこさせて」

「いいや、こいつはあんたを置いて逃げるからダメだ。あんたが身内に金を持ってこさせろ。もちろん、警察に言ったら……わかっているだろうな」

 やはり、簡単に解放してくれそうにはない。ごくりと唾を飲み込む。

「申し訳ないけど、私には身内がひとりもいないの」

「なに? そんなやついるわけないだろ」

 いるのよ、世の中には。誰も頼れるところがない境遇の人たちが。

 私もそう、加瀬くんもそう、土方さんだってそうだ。

「本当よ。私は身内がいないから、学生寮で住み込みで働いているの。そこの同僚ならお金を工面できるわ。連絡させて」

「こいつのスマホです」

 リーダー格の男に、隅にいた男が私のスマホを渡す。

「ロックを解除しろ」

 どうせ逃げられないと思うのだろう。私の手の拘束を切り、リーダー格の男は私にスマホのロックを解除させる。