「お前は子供かよ、加瀬。そいつはなんだ? 学校の先生かなにかか?」

 眩しさに慣れてきて、景色がはっきり見えた途端、倒れそうになった。
 倉庫内には、十五人ほどのガラの悪そうな若い男たちが散らばっていた。大きな懐中電灯が、こちらへ向けられている。

「こいつは、関係ねえ。ただの、お節介な、寮母だ」

 加瀬くんは私を巻き込みたくないのだろう。お節介という言い方はカチンとくるけど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

「どうしたら私たちを帰してくれるの?」

 単刀直入に質問した。彼らの学校名や個人名を聞いたところで答えてはくれまい。こんなことをした理由も、だいたいわかっている。

 彼らを刺激しないように穏やかな声音を心掛けた。すると彼らはニタニタと嫌な笑い方をして顔を見合わせた。

「そりゃあ、なあ。大人だったらわかるだろ。一番いい解決法をさ」

「お金がほしいの?」

「そう、慰謝料だよ。こいつにボコボコにされた仲間の医療費と慰謝料を請求する」

 下卑た笑い声が倉庫内に響いた。なにがおかしいのか。楽にお金を得るために他人を傷つけて、なにが面白いのか。もとはといえば、自分たちが女の子を連れ去ろうとしたからではないか。