「……んだ、美晴、か」 うっすらと目を開けた加瀬くんが、かすれた声で呟く。私は彼の手をぎゅっと握った。 「もう大丈夫だよ。寮に帰ろうね」 「あ、あ……」 加瀬くんが、閉じかけた目を大きく見開いた。 「美晴っ」 返事をすることはできなかった。側頭部に衝撃を感じ、なにが起きたか理解する前に、体が倒れた。同時に意識も、どこかに飛んでいってしまった。