河原から道路まで上がり、近くのバス停から、ちょうど来た寮方面へ向かうバスに乗った。

 バスの窓からぼんやり景色を見ていると、薄暗い人気のない道にさしかかった。同じような平屋の建物がいくつも並んでいる。

「あれ全部貸し倉庫なんだって。でも不況でほとんど空いているようだよ。ひとつ六十坪くらいあるって話だ」

 後部座席から、そんな世間話が聞こえてきた。

 空いている貸し倉庫。もしかして。

 咄嗟に降車ボタンを押した。バス停に着く直前だったので、運転手さんが迷惑そうな顔をしていた。

 急いでバスから降り、倉庫が見えた方向に早足で歩いていく。

 まさかね。高校生が倉庫を借りられるわけないもの。映画やドラマの見過ぎだよ。あるいは戦隊モノか。あれって、謎の倉庫や建築現場でよく戦っているよね。

 不吉に煽られる胸を落ち着けようと、幼いころに見たヒーロー戦隊番組の主題歌を口ずさみながら歩いた。

 たどり着いた倉庫街は、噂通り閑散としており、トラックも車もほぼ停まっていない。どれもシャッターが閉じられており、錆付いたりスプレーで落書きされたりしている。