「もう私たちの力じゃ無理だよ。理事長にも連絡をして、警察に通報しよう」

 就職が控えているので、できれば警察のお世話になることは避けたい。が、命には代えられない。死んでいなくても、大怪我をしている可能性は高い。

『寮長もそう言ってる。まだ誰も先輩を見つけられていないんだ。一度戻ってきた方がいいよ』

「うん……」

「一応、土方さんと左之さんは捜索を続けるって」

 絶望的な状況に、一筋の光明が差した気がした。あのふたりなら、加瀬くんを見つけることができるかも。

『美晴は僕が迎えに行くよ』

「えっ、ダメだよ沖田くん。門限過ぎてるし」

『僕を誰だと思っているの。抜け出すのなんて簡単だよ。それとも夜道をひとりで帰ってきたい?』

 また悪いことを言う沖田くん。寮母の立場では、彼が出てくるのを許可することはできない。すでに過去一度やっちゃってるし。

「大丈夫。バスで帰るから。じゃあ、切るね」

 あとは警察と土方さんたちに任せよう。私は、彼らが帰ってきた時のために、夜食を用意しておこう。

 加瀬くん……どうか無事でいて。