「これ……」
「どうぞ。お口に合うかわかりませんが、食べてください。切腹は、幕末に帰ってからでもいいでしょう」
相手を安心させるため、にこりと微笑んでみた。
土方さんは迷っていた。けど、結局空腹には勝てなかったのか、のろのろと箸を持った。
味噌汁を一口、慎重に口の中に流し込む。ごくりと喉が鳴った。
「……うまい」
彼は安堵したように、表情を和らげる。こうして見ると、普段刀を振り回して敵を斬りまくっている人には見えなかった。
「お前が作ったのか。これはすごい。たくあんにこんな食べ方があるとは」
本当にたくあんが好きなのだろう。どんよりとした目に力が戻ってきたように感じる。
「俺がたくあんを好きだって、どうして知っている?」
「これで調べました」
スマホを見せると、土方さんはああ、と嘆息した。
「それにしても、このように様々な調理法でもてなしてくれるとは。感謝する」
熱があるにも関わらず、土方さんは創作たくあん料理をモリモリ食べる。
フライパンを使った卵焼きや、ドレッシングをかけたサラダは、幕末の人に受け入れられるか心配だったけど、気に入ってくれてよかった。ホッと胸をなでおろすと、土方さんはこちらを見て目を細めた。
「お前、いい嫁さんになるぜ」
「えっ」
そんなこと、初めて言われた。寮生たちに料理の腕を褒められたことがないので、素直にうれしい。
彼は、その後黙々と箸を動かした。用意した朝食は、あっという間に彼の胃袋に収まった。私はぽかんとそれを眺めていた。