一足先にタクシーで寮に帰っていく成瀬さんを見送り、ショッピングセンターを出てすぐの河原に目を凝らしていると、スマホが鳴った。沖田くんだ。
『もしもし、美晴?』
「沖田くん。なにかわかった?」
『まだ先輩の居場所はわからないけど、なにかの手がかりになればと思って』
周辺は車の通りが多く、彼の声が聞こえづらい。私は沖田くんの声に注意深く耳を澄ませた。
『加瀬先輩の取り巻きふたりを締め上げたらさ、白状したんだよ。先輩、他校の生徒とトラブってたみたい』
締め上げたって、どうやって。沖田くんは優しい見かけに関わらず、やることが過激だから、そっちも心配になってくる。とりあえず、今は追及しないでおこう。
「トラブってたって、なにがあったの?」
沖田くんの話によると、事の発端は修学旅行の少し前。自由時間に加瀬くんが取り巻きふたりと繁華街に出かけたときに、相手が誰か知らずにケンカし、ギッタギタのメッタメタにしてしまったことらしい。