「じゃあ、学校の辺りを成瀬さん、俺は商店街、左之は駅前大通りか。美晴と成瀬さんはショッピングセンターで」
「了解。加瀬が見つかり次第、寮長に連絡だな」
そうと決まれば、すぐ寮を出て探しに行こう。一度部屋に戻り、スマホとモバイルバッテリー、財布をポシェットに入れ、成瀬さんと一緒に、以前湊くんを見つけたショッピングセンターへ向かった。
「加瀬くん、どこにいるんでしょうね」
ショッピングセンターなら、生活必需品も学用品も安価で揃うし、ゲームセンターも飲食店もある。寮生の外出先の半分はこのショッピングセンターだ。
「きっと、遠くへは行ってないわよ。そんなに所持金もないはずだもの」
たしかに。なにか嫌なことがあって寮から抜け出したくなったら……私だったら、よく知っているお店や映画館で、コーヒーでも飲んでまったりしたいかも。
加瀬くんも、普段から馴染みのあるところにいてくれればいいけど。
「とにかく見つけて事情を聞いてみないことには……」
本人のスマホに何回も電話をかけるが、呼び出し音が鳴るばかりで、一向に繋がる気配はない。
ショッピングセンター内に到着し、手分けして店内をくまなく探してみたが、加瀬くんを見つけることはできなかった。
「男子トイレ以外は探したわね」
「さすがに、トイレに籠城はしませんよね」
速足で歩いたせいか、すでに息切れしていた。成瀬さんが額の汗を拭ったとき、私のスマホが鳴った。