「俺も見つけたら話をしてみる。そのうち腹が減って出てくるだろうよ」
……と土方さんも言っていたものの、加瀬くんは門限の十七時を過ぎても姿を現さなかった。寮のすべての部屋や倉庫、お風呂場やトイレまで確認したけれど、彼はいない。
一応彼の唯一の肉親である父親にも電話をしたけれど、「知らねえよ! あいつとは親子の縁を切ったんだ!」と逆にキレられた。家族に会いに行っている可能性はなくなった。
「あの鳥の巣野郎! どこ行きやがった!」
土方さんが額に青筋を立てて怒鳴った。
加瀬くんのパーマがかかった髪型を比喩したら鳥の巣になったのだろう。本人が傷つくから、やめた方がいいと思う。
「とにかく、手分けして探しましょう。寮長はここに残ってください。加瀬くんが戻ってくるかもしれない」
「そうだね」
修学旅行にも体力的な問題で行けなかった寮長に、外を走り回らせるわけにはいかない。
あまり大事にするわけにもいかないが、手がかりは欲しい。加瀬くんになにか聞いている寮生はいないだろうか。
「僕が寮生に聞き込みするよ。なにかわかったら連絡する」