彼は今、生きる気力を失って自暴自棄になっている。なんとか栄養を摂らせて休ませないと。幕末の人でも、美味しく食べられそうなもの……。

 「土方歳三 好物」と検索し、出てきた食材を厨房の冷蔵庫から探す。休憩していたおばさんが首を傾げたが、「朝食が足りなくて、お腹が空いちゃいました」とごまかした。

短時間で料理をし、お盆に乗せて部屋に戻った。

「はい、どうぞ。土方さん専用朝ごはんです」

 正座した土方さんの前にローテーブルを置く。その上に、食堂から持ってきたものを乗せた。

 具をたくあんにした海苔巻きに、刻んだたくあん入りの厚焼き玉子。野菜たっぷりのお味噌汁に、千切りにしたたくあんと水菜、干しエビを和風ドレッシングで和えたサラダ。以上、冷蔵庫の残りものを使ったたくあん尽くし定食。

 土方歳三さんの好物を検索したら、たくあんが最有力のようなので、色々アレンジしてみた。もちろん、普通に切っただけのたくあんも用意してある。

 幸運なことに、パートのおばさんがくれたたくあんが一本まるごと冷蔵庫にあったのだ。寮生全員に出す分はなく、かといって私と寮長だけでは食べきれなかったので、ちょうどいい。