土方さんは画面から顔を逸らし、目頭を指で押さえた。そりゃ疲れるよね。

 彼はもともと頭がよさそうだから、一度覚えたらすぐ使いこなしそうだけどな。それまでの道のりが長い。

「そういえばふと思ったんだが、俺の刀はどこに保管してあるんだった?」

「刀?」

 ぎくりとした。今の今まで、その存在を忘れていた。刀は使われていないロッカーに鍵をかけて保管してある。

「処分しようと思ってな。寮生が見つけていたずらしたら危ない」

 刀は武士の魂という。それを処分しようとするなんて、武士であった過去を捨てようとでもしているの?

 たしかに現代で生きていくには必要のないものだ。だけど、あれを手放したら、いつか後悔するんじゃないだろうか。こっそり取り出して、眺めたくなる日もいつか来るかもしれない。

「無理しなくてもいいと思いますよ。それに処分って、どうやってするんですか」

「ああ……総司が言ってた、なんつったか。あれだ。振馬炙りで」

「フリマアプリ!」

 ダメだろう。絶対にダメだろう。美術品として所持するだけでも、刀剣は役所の許可がいるのだ。しかもフリマアプリなんて。出品した途端にアカウント停止になって警察が来ちゃう。

 パソコンの前で椅子に座って見つめ合っていると、突然職員室のドアが開いた。

「お邪魔したかな?」

 入り口にもたれるようにしてこちらの様子を窺っているのは、原田先生だった。

 私はパッと土方さんから距離をとった。