土方さんが、私のことをそんな風に想っていてくれたなんて。
そんなわけがないと思っていた。彼の一番はいつだって、幕末の新選組で、私が入り込む隙間なんて一ミリもないはずだった。
そう思い込んだのは、自分に自信がなかったから。
彼の強引なほどの優しさは、嘘じゃなかったんだ。私が勝手に戸惑っていただけ。
乾燥してひび割れた大地に水がしみ込んでいくように、心が溢れるくらいの愛しさで満たされていく。
私はやっぱり、この人が好きだ。
「本当はいつも不安で不満で仕方がなかった。それでも生きていけるのは、お前が近くで笑ってくれるからだ」
幕末から現代に来て、ひとりぼっちだった土方さん。異世界に迷いこんだような彼は、武士である誇りも押さえつけ、寮母に甘んじた。そうするしかなかったからだ。
私と彼は、似た者同士だ。
「あなたがここで生きると言うのなら、私はずっと、近くにいます」
なにもかもを失い、絶望していた私に言いたい。寮母も捨てたものじゃない。寮母をしていたからこそ、土方さんに出会えた。